ドイツのマイスター制度とは?

ドイツ製品といえば信頼性の高い自動車をはじめ、家電ではミーレやケルヒャー、そしてプロの料理人に愛用されるキッチンウェアなど、どれも完成度の高さにおいて世界的に評価されています。そこにはドイツが国家ぐるみで職人教育に力を入れている背景があります。
高品質なドイツプロダクトはマイスターと呼ばれるプロフェッショナルから生み出されています。

マイスターを輩出するための教育制度も充実しており、義務教育の後半になると、子どもたちは職業訓練に進むか、大学進学を目指すかを選択します。

プロフェッショナルを志す子は一人前の職人となるための専門コースに進み、あこがれのマイスターを目指して日々精進していくのです。

1. 技能を伝承するための2段階式国家資格

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職人として認められるには、まずゲゼレ (Geselle) という国家資格の取得を目指します。

義務教育を終えたプロ志望の子は、職業訓練を開始するために見習いとして雇用してくれる研修先の工房を探します。

その工房で親方 (マイスター) から技術的な手ほどきを受けながら実習し、週に1~2回は職業の理論を学ぶために学校へ通います。この間、雇用主からは手当としてお給料も支払われます。

こうして職場での実習と職業学校での学習を2 ~ 3年続けたのち、ゲゼレ取得のための国家試験を受験します。合格すると、晴れて即戦力のある職人として認められるわけです。

その後は、職場でさらに技術力を高め、専門学校で経営学、教育学、法律などを学んで国家試験に臨みます。合格すると、最高峰マイスターの称号が与えられます。

2. マイスター制度の利点

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このように、ドイツでは職人を育成するためのプログラムが充実し、技術の継承が安定的に行われています。マニュアル化できないような緻密な技能まで、親方がマンツーマンで後継者に教えることができるわけです。

さらに製品自体もマイスターの称号を持つ職人が手掛けたということで価値が高まり、他社商品との差別化を図ることにもつながります。こういった市場からの評価が技術者に伝われば、当然本人のモチベーションアップにもつながり、さらなる習熟度の向上を目指すようになります。

独立開業するために必須だったマイスター取得ですが、2004年の法改正によりそれまでの半数以上の業種でマイスターを持たなくても開業できるようになりました。とはいえ、任意で取得することは可能です。マイスターを持っていると就職で有利に働くこともあります。というのも、マイスター保持者のみが見習い職人の指導を行うことができるからです。

egfのジュエリー工房でも多くの職人、マイスターが在籍しています。機械による工程のあと、製品へと加工するためには、どうしても職人の技術に頼らざるを得ません。マイスターの磨き抜かれた技があってはじめて、美しい鍛造リングが完成するのです。

伝統的な技法を次世代に伝え、守り抜いていくという独自の文化によって生み出されたマイスター制度。ドイツ産業界の発展に大きく貢献するだけでなく、世界中の職人たちから注目されている教育プログラムなのです。